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Documentation / Mathematica / デモ / ノートブック /

Mathematica における新しい表記法の作成

Jason Harris

はじめに

Mathematica 3.0および4.0は,積分,総和,総積等,ほとんどの標準的な数学表記を認識することができる.しかし,多くの数学分野,特に純粋数学の分野では,付加的な表記法が多数使われる.Mathematica では,その入出力のプログラマビリティにより,このような表記法を導入して作業内容に統合することができる.

Notation パッケージを使うと,柔軟に,かつ幅広く独自の表記法を作成してセッションに加えることができる.パッケージについての詳細はこちらを参照していただきたい.Notation パッケージを使わないで独自の表記法を作成・定義することは非常に困難であり,多くの問題が発生する可能性がある.

Notation パッケージをロードし,表記法を設定するためのパレットを開く.

In[1]:=

簡単な例

次の式は関数gplusについての新しい表記法を宣言する.

In[2]:=

に合致する入力はすべてとして解釈される.

In[3]:=

Out[3]=

gplus式はすべて新しい表記法でフォーマットされる.

In[4]:=

Out[4]=

ウィグナー(Wigner)の3j 記号の表記法

ウィグナーの3j 記号は量子力学の角運動量の合成に用いられる.3j 記号は対応するClebsch-Gordon係数のより対称的な形である.このセクションでは3j 記号の表記法を作成し,いくつかの例を使ってこの表記法の使い方を解説する.

ウィグナーの3j 記号の表記法を定義する.

In[5]:=

この表記法は下付き文字3j が付いた丸カッコで囲まれた3Cross2のGridBoxで構成される.この他にも隠れたTagBoxesを使ったもの等,さまざまな表記法が考えられる.

ウィグナーの3j 記号の一般的な計算.

In[6]:=

Out[6]=

3j 記号の表記法は解釈・フォーマットともに正しく行われる.

In[7]:=

Out[7]=

このウィグナーの3j 記号の表記法が計算において自由に使えるようになったので,場合によっては読みやすさが格段に向上する.さらに入力を簡単にするために,現行ノートブックにウィグナーの3j 記号の入力エイリアスを加えることができる.

ウィグナーの3j 記号の入力エイリアスを加える.

In[8]:=

ウィグナーの3j 記号の空のテンプレートは入力セルにEscapeKey3jEscapeKeyとタイプすると作成できる.

以下にウィグナーの3j 記号を使った恒等式を表す短い例を示す.

ベクトルを定義する.

In[9]:=

のスカラー3重積を計算する.

In[12]:=

Out[12]=

球面テンソルの表し方にはさまざまな方法がある.以下は簡単かつ一般的な方法である.

球面テンソル要素を定義する.

In[13]:=

Clebsch-Gordan係数が非物理的であるというメッセージをオフにする.

In[16]:=

ウィグナーの3j 記号の恒等式の実例を示す.

In[17]:=

Out[17]=

量子力学におけるブラ,ケット,演算子

以下に量子力学で用いられるディラック(Dirac)のブラ-ケット表記法について述べる.

ParenthesizeFullFormを変更する

以下のコードはタグボックスと完全形の形式を修正するために用いる.この修正はこのノートブックにおける説明の要ではないが,正しくフォーマットするために必要である.

In[18]:=

In[23]:=

OperatorsBrasKetsの表記法の宣言

OperatorsEigenketsの表記法を宣言する.

In[26]:=

In[27]:=

次のブラ,ケット,ブラケットの表記法は,このノートブックのスタイルシートに加えられた特定のスタイルに依存する.このようなスタイルは,ブラ,ケット,ブラケットが正しく表示・構成されるために必要である.

KetBraBraketの表記法を宣言する.

In[28]:=

これでKetは物理学の標準表記法に従ってフォーマットされるようなった.

In[31]:=

Out[31]=

In[32]:=Bra[Psi]

Out[32]=

これらの新しいオブジェクトの完全形は一様かつ直観的である.

In[33]:=

Out[33]=

ブラとケットの入力

タグボックスやその他の内在構造を構成する複雑なテンプレートを入力するには,現行ノートブックに入力エイリアスを追加することが望ましい.ブラとケットの入力エイリアスを作成してみる.

ブラ,ケット,ブラケットの入力エイリアスを作成する.

In[34]:=

これでブラ,ケットがEscapeKeybraEscapeKeyEscapeKeyketEscapeKeyで簡単に入力できる.

In[37]:=

Out[37]=



簡単な計算

以下はBraKetについて定義された表記法の機能を説明するための簡単な定義と計算である.

NonCommutativeTimesを導入する.

In[38]:=

In[39]:=

いくつかの意味を定義する.

In[40]:=

簡単な計算.

In[43]:=

Out[43]=

In[44]:=

Out[44]=

In[45]:=

Out[45]=

In[46]:=

Out[46]=

In[47]:=

Out[47]=

In[48]:=

Out[48]=

In[49]:=

Out[49]=

以下のKetの表現が希望のものとなっているかどうかは,完全形を表示することで確かめることができる.

In[50]:=

Out[50]=

角運動量

このサブセクションでは,量子力学における角運動量と昇降演算子を示すための簡単な定義と計算を行う.

NonCommutativeTimesの属性を指定する.

In[51]:=

演算子と,昇降演算子を記号化する.

In[52]:=

昇降演算子が角運動量の固有状態にどのように作用するかを定義する.

In[53]:=

簡単な計算.

In[56]:=

Out[56]=

さらに操作を進めるには,NonCommutativeTimesにいくつかの基本的な属性を加える必要がある.以下は加算と定数それぞれについての複数の線形性の実装である.これは簡単なものであるが,説明を目的とした場合には十分である.以下の規則は,定数はNonCommutativeTimes式から抽出でき,NonCommutativeTimesは加算全体に分配されるということを示している.

NonCommutativeTimesの動作を指定する.

In[57]:=

定数を定義する.

In[59]:=

正しく計算が行われる.

In[65]:=

Out[65]=

角運動量理論において,演算子は角運動量の固有状態で固有値を持つ.演算子を用いる演算子に分解できることは,基礎的な計算のみで示すことができる.これを証明してみる.

In[66]:=

Out[66]=

In[67]:=

Out[67]=

量子化された角運動量について十分な知識があれば,上記計算によってに等しいことが示されたということは自明であろう.

角運動量についての実装を少し拡張し,角運動量の固有状態が直交であることについて考えてみる.

角運動量の固有状態は直交する.

In[68]:=

これで,角運動量の異なる固有状態間においての分解を評価することができるようになった.

In[69]:=

Out[69]=

最後に,固有状態の演算子の積を含む式を計算してみる.

In[70]:=

Out[70]=

圏論可換図

あらゆる表記法の中でも最も複雑なもののいくつかは圏論の分野に見られる.このセクションでは圏論における可換図をMathematica の表記法としてどのように設定するかについて,簡単な例を取り上げて述べる.以下の例はBirkhoff,MacLane共著「Algebra」の自然変換についてのセクションからの引用である.

FunctorArrowsの表記法を定義する.

In[71]:=

SquareCommutativeDiagramオブジェクトの表記法を,上で定義したFunctorArrowsを使って定義する.

In[72]:=

出力がフォーマットされないように頭部を変えると,次の可換図がSquareCommutativeDiagramとして解釈されていることが確かめられる.

In[73]:=

Out[73]=

可換図を含む計算.

In[74]:=

Out[74]=

規則

以下はMakeBoxesおよびMakeExpressionの定義がSquareCommutativeDiagramsの表記法の実装に必要であることを示している.

In[75]:=



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