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3.2.11 楕円積分と楕円関数
楕円積分や楕円関数を使うときは,特殊関数の場合以上に引数の指定には注意を要する.これらの関数の記述や使い方に関しては,相違した規約がしばしば使われる.その多くは,引数の呼び方において違いがあったり,引数と引数の間に入れる区切り記号としてコンマ以外の記号が使われたりする.

楕円積分と楕円関数の共通的な引数に関する規約

異なった引数規約の間における変換
楕円積分

楕円積分
を有理関数, を の3次または4次の多項式とするとき, で表される積分を楕円積分と呼
ぶ.あらゆる楕円積分は,3種類あるルジャンドル・ヤコビの楕円積分で表すことができる.
第1種楕円積分 EllipticF[ , m]は, において で与えられる.この楕円積分は,単振子の運動状態を表した方程式の解法
に使われる.また,第1種の不完全楕円積分としても知られる.
文献によっては, Mathematicaで使われる引数の順序とは逆の順序で引数が与えられることがあるので注意する.
第1種完全楕円積分 EllipticK[m] は, で与えられる.ここで, は第1種完全楕円積分を表し, は不完全楕円積分を表すことに注目されたい.実際の用途では, が省略され, は単に と記述されることがよくある.補第1種完全楕円積分 は, で与えられる.この積分はしばしば とも表記される. と は,対応するヤコビの楕円積分(以下の説明を参照)の「実部」と「虚部」の各々からなる4分の1周期を与える.
第2種楕円積分 EllipticE[ , m]は, の範囲の に対して, で与えられる.
第2種完全楕円積分 EllipticE[m]は, で与えられ, とも表記される.この補形は となる.
ヤコビのゼータ関数 JacobiZeta[ , m]は, で与えられる.
ヒューマン(Heuman)のラムダ関数は, で与えられる.
第3種楕円積分 EllipticPi[n, , m]は, で与えられる.
第3種完全楕円積分 EllipticPi[n, m]は, で与えられる.
第2種完全楕円積分 をプロットする.
In[1]:= Plot[EllipticE[m], {m, 0, 1}]

Out[1]= 
で を計算する.
In[2]:= EllipticK[Sin[30 Degree]^2] // N
Out[2]= 
プロットすると,楕円積分が複素平面上で複雑な構造を持つことが分かる.
In[3]:= Plot3D[ Im[EllipticF[px + I py, 2]], {px, 0.5, 2.5}, {py, -1, 1}, PlotPoints->60 ]

Out[3]= 
楕円関数

楕円関数とこれに関連した関数
2次形式の平方根を含む有理関数は,逆三角関数を使って積分することができる.このため,三角関数をこれらの積分で得られる関数の逆として定義することもできる.
類推から,楕円関数は楕円積分で得られる関数の逆として定義することができる.
ヤコビの楕円関数の 振幅 JacobiAmplitude[u, m]は,第1種楕円積分の逆関数である. ならば, と書ける.ヤコビの楕円関数を用いるとき,しばしば が省略され, が と書かれる.
ヤコビの楕円関数 JacobiSN[u, m]および JacobiCN[u, m]は,それぞれ および で与えられる.ただし, とする.また,JacobiDN[u, m]は, で与えられる.
ヤコビの楕円関数 JacobiPQ[u, m]は全部で12種類存在する.それらは, Pと Qを S, C, D, Nから組み合せることで作れる.これらは, を満足する.ただし,この式では とする.
三角関数の間にはさまざまな関係式があるが,それに似た関係がヤコビの楕円関数の間にも数多くある.ヤコビの楕円関数は,極限を取ったとき,三角関数に還元する.このため, , , , , , および, というような関係が成り立つ.
の記述が積分 を表すのに使われることがある.この積分は先に定義したヤコビのゼータ関数を使って表せる.
楕円関数の重要な特性の1つとして,引数の複素数値について2重の周期性を持つことがあげられる.通常の三角関数は単一な周期性を持つ.つまり,任意の整数 について の周期性を持つ.これに対して,楕円関数は2重周期性を持つ.つまり, の周期性が と の任意の整数の対について成り立つ.
のようなヤコビの楕円関数は,複素平面上で2重の周期性を持つ.周期には と が含まれる.ここで, は第1種完全楕円積分を表す.
ヤコビの楕円関数の記述 において と のどちらを選択するかは,4分の1周期の点で得られる と の関数値から判明する.
ヤコビの楕円関数 の絶対値が2つの方向に沿って基本周期を持つのがグラフから分かる.
In[1]:= ContourPlot[Abs[JacobiSN[ux + I uy, 1/3]], {ux, 0, 4 EllipticK[1/3]}, {uy, 0, 4 EllipticK[2/3]}, PlotPoints->40 ]

Out[1]= 
Mathematicaには,逆ヤコビの楕円関数である InverseJacobiSN[v, m]や InverseJacobiCN[v, m]等も組み込まれている.例えば,逆関数の1つ, は, が成り立つための の値を与える.逆ヤコビの楕円関数は楕円積分に関連している.
4種類の楕円シータ関数 は, aを 1, 2,3または 4として EllipticTheta[a, u, q]から作ることができる.これらの関数は, , , , で定義される. シータ関数はパラメータ を明示しないで と書かれることもある. シータ関数は, と書かれることもあるが,その場合に と は という式で関係付けられている.また, は で与えられる に置き換えられることもある. これらすべてのシータ関数は拡散方程式 を満たす.
ヤコビの楕円関数はシータ関数の比としても表すことができる.
この他,シータ関数の表記には, , , , がある. ただし, とする.
ネビル(Neville)のシータ関数は,先のシータ関数を使って, , , , と定義できる.ここで, とする. ヤコビの楕円関数はネビルのシータ関数の比として表すことができる.
ワイエルシュトラウス(Weierstrass)の楕円関数 WeierstrassP[u,  ,  ]は,楕円積分の逆関数と見ることができる.ワイエルシュトラウスの関数 は, を満たす の値を与える.関数 WeierstrassPPrime[u,  ,  ]は, で与えられる.
ワイエルシュトラウスの関数は,基本半周期 と を用いて書かれることもあり,この と は WeierstrassHalfPeriods[ ,  ]を使い不変数 と から求まる.
逆ワイエルシュトラウスの楕円関数 InverseWeierstrassP[p,  ,  ]は, とする の2つの値の1つを返す.この値は複素半周期 と によって定義される平行四辺形内にある.
逆ワイエルシュトラウスの楕円関数InverseWeierstrassP[ p, q ,  ,  ]は, ,および, となる の一意的な値を返す. にそのような値が存在するには, と は の関係式を満たす必要がある.
ワイエルシュトラウスのゼータ関数 WeierstrassZeta[u,  ,  ]とワイエルシュトラウスのシグマ関数 WeierstrassSigma[u,  ,  ]は,ワイエルシュトラウスの楕円関数に各々, と, の関係式で関連している.
ワイエルシュトラウスのゼータ関数とワイエルシュトラウスのシグマ関数は周期性を持たないため,厳密には楕円関数ではない.
楕円モジュラ関数

楕円モジュラ関数
モジュラ・ラムダ関数 ModularLambda[ ]は, で与えられる半周期の比とパラメータを の関係式で関連付ける.
クライン(Klein)の不変モジュラ関数 KleinInvariantJ[ ]とデデキント(Dedekind)のイータ関数 DedekindEta[ ]は, の関係式を満たす.
楕円モジュラ関数は,引数の特定な1次分数変換において不変になるように定義されている.このため,例えば, と の変換操作をどう組み合せて行ったとしても は不変である.
一般化された楕円積分と楕円関数

一般化された楕円積分と楕円関数
ここまで述べた楕円積分や関数の定義は伝統的な使い方に基づいている.現代の代数幾何学では,もう少し一般化された定義の方が都合がよい.
関数 EllipticLog[ x, y , a, b ]は,積分 の値として定義される.ただし,平方根の符号は とする を与えることで指定する. の形の積分は,常用対数(および,逆三角関数)を用いて表せる.平方根でくくられた多項式を3次にして,これを一般化したのが EllipticLogとみるとよい.
EllipticExp[u, a, b ]は EllipticLogの逆関数である.この関数は EllipticLogに引数としてある x, y のリストを返す. EllipticExpは楕円関数で,複素 平面上で2重周期を持つ.
ArithmeticGeometricMean[a, b]は,2個の数 aと bの 算術幾何平均 (AGM)を返す.この量は,楕円積分や他の関数を計算する数値アルゴリズムにおいて中心的な役割を果たす. と を初期値として,必要な精度の下で となるまで変換 , を繰り返すことで,AGMが求まる.
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